
個人的な感覚では、東北から北でしか「夜は涼しくなる」という基本的な原則は守られていないと思うんです。東京でも、北陸でも、関西でも、僕は「絶対に寝れない」クラスの熱帯夜を経験しましたけど、八戸のそれは「眠ければ寝れる」といった程度です。この時期、東京以西の方が聞くと驚くかもしれませんが、マジでクーラーは必要ありません。
「扇風機を付けると気持ち良いけど、お腹冷やしちゃうかな?」と逡巡するぐらいなんです。
したがって、東北以北ではクーラーは「贅沢品」としての性格を残しているし、東京以西でのクーラーは「生活必需品」としての立ち位置を確保しているわけですね。
世界は、昼には勝手に暑くなり、夜には勝手に冷める。そんなシンプルな原則を発揮できるのが東北の大きな魅力です。東北は夏の盛りであっても冷却装置としての性格を捨てることなく、毎日のサイクルを頑強に守り続けています。
ことに港町八戸にあっては、山と海はせめぎ合い、波は岸壁を打ち、夜は昼間のじりじりとした暑さと一緒に僕らの心と体から発生する過剰な熱量も吸い上げてくれます。まるで、熱量を発生させる太陽を「温める太陽」と呼ぶとすれば、それとは真逆の性質を持つ「冷える太陽」が浮かんでいるかのような、そんな夜を東北は毎晩迎え入れているように思えます。




