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'10 05月26日 (水) 05時05分 : 書評「ビジネス・インテリジェンス」

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ペロッと読めて応用が利きそうな本を1冊ご紹介。2009年に出された「ビジネス・インテリジェンス―未来を予想するシナリオ分析の技法」という本です。分類はビジネス書ですが、応用はビジネスにとどまりません。

書評「ビジネス・インテリジェンス」

いきなりですが・・・あなたの家に空き巣が入るとしたら、どこから入るでしょう?

  • 空き巣はあなたの家のどこに金目のものがあると推測するのか?
  • 空き巣はあなたの家にどんな金目のものがあると想像しているのか?
  • 空き巣が破壊しやすいのは何か?
  • 侵入時に近隣住民から見つかりにくい時間や場所は?
  • 侵入時にあなたと鉢合わせせずに済む時間帯は?
  • あなたに見つかった時に逃走経路を確保しやすい侵入口はどこか?

・・・考えるとキリがありませんね。一軒の家の問題でさえこんなに複雑ですから、テロや戦争の危機と戦わなければならない国家となると話はさらにさらに難しくなるのは想像に難くありません。

そんな安全保障や外交の分野で生まれたのが、CI(Conpetitive Intelligence:競合インテリジェンス)という考え方です。といっても、何も戦争やテロの本というわけではなく、題名も「ビジネス・インテリジェンス」というぐらいですから、CIという考え方・方法論をビジネスに活かすための入門書として平易にCIを紹介してくれています。

要は「大変な世の中だけど、いかにうまくやるか?」の方法論なんですね。

インテリジェンス VS インフォメーション

CIのCは「Conpetitive」の頭文字で「競争の、競合する、競争の激しい」という意味です。空き巣とあなたの競争や国家とテロ組織の競争のように、ビジネスの世界も様々な会社や環境が渾然一体となって「競争が起きる世界」が出来上がっています。そんな競争に満ちた世界で「うまいことやろう!」というのが、CIの考え方の発端です。

一方、CIのIは「Intelligence」の頭文字で「知能、知性、知力、情報」という意味です。日本語ではインテリジェンスとインフォメーションが両方「情報」という言葉でゴチャゴチャに表現されていて、インフォメーションはただの一次的な情報でしかないが、インテリジェンスは判断や行動を可能にするものを意味するのだ!と本書は述べています。

先の空き巣の例をもう一度出しますと、例えばインフォメーションは以下のようなものを指します。

  • あなたの家の壁の厚さは20センチ。
  • あなたの家の窓ガラスの厚さは1センチ。
  • トイレの窓ガラスの大きさは、30センチ四方。
  • あなたの家の表玄関の鍵は2つ。
  • あなたの家の裏口の鍵は1つ。

もっと言えば、建築業者さんにお願いすれば家の設計図そのものを見ることもできるでしょう。しかし、こんな風に杓子定規で細かすぎる情報を見ていても、「空き巣はどこから入るのか?」という大局感は得にくいものです。そう、個々の詳細な数字ではなく、それらを総合的に判断して得られる大局感こそが「インテリジェンス」で、上に挙げた細かな情報群を「インフォメーション」だと思ってもらえれば良いんです。

ビジネスで言えば、企業の経営者が未知の危機や業績不振の恐れに対応するための判断・行動を可能にするためのものをCIと呼びます。あなたが空き巣に対抗する時と同じように、国家がテロに対抗するための検討を洗練した方法論が、ビジネスの世界で今注目され、応用されているんですね。

「またー?孫子の兵法なんて聞き飽きたよ?」

「大変な世の中だけど、いかにうまくやるか?」を方法論的に解き明かそうとするCIにおいて最も重要な考え方の1つとして、「己を知る」ということが重要視されています。そう、有名なアレもバッチリ引用されています。

孫子「彼を知りて己を知れば百戦あやうからず

ビジネス書を読み漁っている人なら、もうウンザリといったところでしょう。分かってるって!と思われるかもしれませんが・・・では、どうやって「己を知る」事が出来るのか?という具体的な手法についてはどうでしょう?

さっき「あなたの家に空き巣が入るとしたら、どこから入る?」と聞かれて、理路整然と「ウチは○○で××で△△だから、ココから入るに違いない、なのだ!」と説明できる人って、そんなにいないんじゃないかと思うんです。本書のポイントはまさにココ、自分を知る方法について具体的な手法をまとめている点にあります。

手を変え品を変え「己を知る手法」を具体例とともに紹介することに、本書はかなりの分量を割いてくれています。1つ興味深い例を挙げるならば「ブラインドスポット分析」。「ブラインドスポット」とは即ち「盲点」。自分が意識できていない盲点を発見する方法がある、というのです。なんともフシギな話ではありますが、CIではそのような事もやってのけるための手法が日々研究されているんですねー。

そして世界へ、そして未来へ

己を知っただけで本書は終わりません。己を知った後は、世界=業界全体を知り、ひいては世界の未来を予想する方法へと突き進んでいきます。CIにおいて「シナリオ分析」と言われる方法で世界はいかに変わっていくかの予想を作り上げていきます。

この辺りは是非、一番オイシイところだと思いますので、本書をご覧下さい。

最後に、本書のキーワードを以下に示します。

  • CI(Conpetitive Intelligence:競合インテリジェンス)
  • KITプロセス
  • ファイブフォース分析
  • グループ・マッピング
  • 戦略キャンバス
  • フォーコーナー分析
  • ブラインドスポット分析
  • シナリオ分析
  • ウォー・ゲーム
  • 競合仮説分析
  • トリップ・ワイア

これだけ読むと、一気にビジネス書っぽいですよね(笑) ちなみに、いくつかの用語は経済学者であるマイケル・ポーターが考え、作り出したものです。この人の本は背景として読んでおいても良いかもしれません。「競争の戦略」「競争優位の戦略」「国の競争優位〈上〉〈下〉の3冊で「ファイブフォース分析」「バリューチェーン」「競争優位・産業クラスタ」辺りの用語を押さえておくと、この本に限らず経済寄りのビジネス書を読みやすくなりますよ!

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