
おことわり
本エントリでは、先日終了した八戸市長選についての個人の私見を掲載しています。読者の皆様におかれましては、個々に政治信条をお持ちでありましょうが、下記の内容はあくまで「私個人の考え方」であり、皆様方に強制したり、説得したりしようとするものではありませんので、ご了承いただけますようお願いいたします。
八戸市長選の結果
八戸市長選が終わり、現職の小林さん(自民推薦)が再選を果たしました。得票結果は以下の通りです。
- 59,237 小林 眞(59)無所属・現職(自民、公明推薦) 当選
- 36,021 三浦 博司(31)無所属・新人(民主推薦)
- 4,219 千葉 和男(61)無所属・新人
当サイトは、八戸ローカルの情報を扱う性格上から八戸市長選については言及していませんでした。というのも、八戸で活躍されている方々の情報や写真を掲載している以上、当サイト管理人である私の言動がそういった八戸の方々の意見だと誤解される可能性があると判断したというのが理由です。
では、実際私の支持はどうだったか? と言いますと、一択で小林さん支持です。個々の政策は後述するとして、大枠での小林さん支持の理由は以下の通り。
- 青森県での衆院選・小選挙区で4人中3人が自民を占めた以上、自民の支持を取り付けている小林さんを首長としたほうが国との関係を円滑に進められる。
- 八戸中心街を活性化するための施設「はっち」の立ち上げという重要な時期で首長が変わるのはふさわしくない。
- 対立候補の三浦氏は民主党同様に「無駄を省く」事に重点を置いているが、小林氏は「成長させる」事に重点を置いており、管理人個人は「成長させる」方を選択したいと考えていた。
また、小林さんと三浦さん個々のマニフェストで良いと思ったもの・悪いと思ったものを以下にまとめます。ただし、あくまで管理人個人の意見であることをご了承下さい。(参考にしたのはこちら)
- 小林さん : ○ : 「はちのへ水産振興会議」設置で水産業グランドデザイン策定
- 小林さん : ○ : 農業交流研修センターを改組し、機能強化
- 小林さん : ○ : 種差や蕪島に誘客施設・休憩施設を整備
- 小林さん : ○ : 地域密着型教育の実施校を全小・中学校に拡大
- 小林さん : × : 市の各種施設の命名権活用による収入増
- 三浦さん : ○ : 地産地消を推進するため「総合戦略プロジェクトチーム」設置
- 三浦さん : × : 「八戸グリーン・ニューディール・25%プロジェクト」を推進
- 三浦さん : × : 「仕事・こども・くらし」の予算配分のための「市政戦略室」を設置
- 三浦さん : × : 無駄な支出を防ぐ「市政刷新室」を設置
- 三浦さん : × : 市長・副市長の報酬を3分の1カットし、退職金を返上
以下、所感をまとめてみます。
三浦さんの政策で、支持できなかった点
全体的に見て小林さんも三浦さんもマニフェストに大きな路線上の違いはありませんでしたが、個人的にまったくもって問題外だったのは三浦さんの「八戸グリーン・ニューディール・25%プロジェクト」。衆院選特集の際にもまとめましたが、二酸化炭素25%カットという政策がどれほどにお金がかかり、かつ市民生活や産業を圧迫するものかについて現状でも民主党+官僚で再検討を行われているというのに、地方の一自治体である八戸市がその路線にまるまる乗っかるなんてリスクが大きすぎるというのが個人的な受け止め方です。自動車社会が出来上がっており、第一次・第二次産業主体である八戸市は、二酸化炭素25%削減という現状の国政によって間違いなく痛みを感じることでしょう。今後国政がどのように動くかを見定めてから市政を検討するべきで、現状で実行を約束するのは時期尚早ではないかと考えます。
それから、「市政戦略室」「市政刷新室」「報酬3分の1カット」辺りの三浦さんの行財政改革路線は、残念ながら個人的には支持できません。最適な予算配分をするために市政はあるのですし、無駄だって市役所の皆さんや市議会で議論すれば済むことです。組織を作ったから解決するような問題だったら、これほど取りざたされないでしょう。無駄を省きたいという意気込みは理解できますが、新しい組織を作るリソースがあるのなら、もっと議論を活発にしたり各種政策を実行して欲しいと個人的には考えます。
もっと言えば、報酬をカットするぐらいなら市長に立候補しないで欲しいとすら思ったりもするんです。市民は別に「市長は高給もらって羨ましいねぇ、フン」なんてせせこましい事は思ってはいないわけで、むしろしっかりとお給料をもらった上で、その給料に適った仕事をしてほしいと思っているんじゃないでしょうか。「政治家なんてみんなダメ」なんて軽口を叩く人は多いけれど、様々な経験の上に「政治家ほど大変な仕事は無かろうよ、尊敬するぜ」なんて考えている人だって、世の中にはいるように思うんです。だからこそ、給料を減らすよりも、仕事をして結果で示して欲しいなと思うんです。
三浦さんの政策で、支持する点
小林さん・三浦さん双方が水産業復活を謳っているのは、非常に心強いと感じます。ただし、小林さんは農業についても力を入れることを具体的に名言している点で、生産業を守り育てたいと願う私個人としては小林さん支持になった・・・訳ですが。
そんな小林さんのマニフェストに入っていないのが非常に不満なのが、三浦さんが掲げる「地産地消」。こちらは現在の市政ではなおざりになっている重要なテーマだと考えます。地産地消は地域の皆さんの健康や家計に直接響きますし、かつ「観光客を呼び込む」事にも繋がるテーマです。つまり、地産地消は内にも外にも響くテーマであり、国政レベルで地産地消が叫ばれている今が市政にとっても千載一遇のチャンスであると思うんですね。だからこそ、今回の選挙では敗戦してしまった三浦さんではありますが、今後も積極的に地産地消に取り組んでいただきたいと思っている次第です。逆に小林さんには、三浦さんの知恵を活かしてほしいと願います。
小林さんの政策で、支持できなかった点
上述したマニフェスト群○×リストで、小林さんの政策で唯一×をつけたのが「市の各種施設の命名権活用による収入増」。企画を仕事としている私個人の意見ではありますが・・・施設の名前というのは、その施設で何をしたいか? というコンセプトを反映しなくてはダメだ! ・・・と、強く思います。他人に命名権を売れるぐらいに思い入れもコンセプトもない施設なら、そもそも作るなと言いたい(過激な発言ですね、ごめんなさい)。
小林さんが作ろうとしている水産業グランドデザインは、八戸の水産関係者全員が信じられるコンセプトがまず先にあり、その下に個々の施策の枝葉が伸びていなければなりません。同様に、「八戸をどうしたいのか?」というコンセプトの下に各種施設があるのなら、その名前は間違いなくコンセプトを反映していなければいけません。
八戸は本当に「人が出て行くだけで、年寄りばかりの町」か?
次に「小林さんの政策で支持する点」を紹介するべきではありますが、その前にちょっと、別の話題を。こんな事を言う八戸の人がいます。皆さんも聞いたことがあるんじゃないでしょうか?
「八戸は人が出て行くばかりで、年寄りばかりで、もうダメだ」
これって、本当ですかね? 統計データから、この言葉の真偽を確かめてみましょう。
八戸市民の皆さんでも案外気付いていない場合が多い事のひとつに「八戸は周囲から労働力が流入している町だ」ということがあります。若い人は知っている人が多いんですが、中年以上の方々は知らない人が多いように、個人的には感じられます。
八戸からは若年層が就職・進学で市外へ出て行ってしまう傾向が顕著であり、毎年人口は減少しています。一方で、三沢・十和田・久慈などの周辺市町村から若い労働力が流入してきていることも事実なんですね。例えば2009年3月、1年で最も流出人口が増えるこの時期の社会増加(引っ越しで入ったり出たりする人の統計)は、以下のようになります。(八戸市の統計情報より)
- 転入 : 1407人
- 転出 : 2233人
つまり、八戸は「人が出て行く一方ではない」んです。一ヶ月に1400人もの人たちが八戸に入ってきているなんて、知らなかった人が多いんじゃないでしょうか? これは全国の他都市と比べても非常に恵まれているんですが、この辺りはどうにも市民の方はご存じないように思われます・・・いかがでしょうか? ちなみに2008年度の八戸市の社会増加は人口比でー0.0048%、青森県全体ではー0.0057%(総務省の統計及び八戸市の統計情報より)。社会増加による人口減少が全国でダントツの青森県にあって、八戸は善戦しているとすら言えるんですね。具体的には、社会増加による人口減少第2位の長崎県・第3位の秋田県を飛び越して、第4位の岩手県に肉薄する数字となっています。青森県全体での社会増加の割合に合わせれば、本来1345人が八戸を出て行く計算になりますが、現状では1181人しか減っていません。1345−181=164人をつなぎ止める力を、今の八戸は持っているということになります。
つまり、「八戸は人が出て行くばかり」は、全国的にはそう言えるかもしれないけれど、青森県としては非常に恵まれているほうだと言えそうです。
次に「年寄りばかりで」という部分。
八戸における2009年3月現在の「65歳以上の高齢者の割合」は、21.9%。全国平均は2009年5月で22.5%ですから、全国平均より下回っています。一般的には、地方のほうが都市部よりも高齢者の割合が高いのに、八戸は全国平均を下回っている・・・これは、前述した社会増加よりももっと善戦していると言えるでしょう。
まとめます。八戸に住む人で「八戸は人が出て行くばかりで、年寄りばかりでダメだよ、もう」なんてもっともらしく言う人がいますけど、実は日本全国の地方都市の中では「良いほう」なんですね。若い世代から八戸を温めていく事も、あながち無理ではないかもしれない・・・そう、統計は語っているように僕には思えます。正直なところ、「八戸はダメよね」なんて裏付けの数字も無しに言う人のことを、僕はうとましくすら思っていたりするんです。そんな事言われたって、何にも楽しくないもの。
小林さんの政策で、支持する点
そんなこんなで、実はまだ八戸には周辺市町村から人を呼ぶ力や人を引き留めておく力が残っており、かつ若年層も日本全国と比べれば多いことが分かったわけですが、そんな中でも現状で市民が減少している理由はやはり「八戸生まれの若年層の転出」です。これを防ぐための施策こそが、八戸市に活気を呼び込むための最優先課題となります。「いかに人を増やすか?」が小林さん・三浦さん双方のマニフェストに出てこないのは大問題だと思ってはいるのですが、間接的に人口増に寄与する政策として、小林さんの「地域密着型教育の実施校を全小・中学校に拡大」を挙げたいと思います。
八戸を離れている僕が語るのはおかしいと思う方も多いかもしれませんが、八戸の方々とお話ししながら感じるのは「八戸を良い町と思っていない」ということです。こんな事が何故起こるのか? と言うと、当然「一般常識を身につける子供時代に、親や周囲の人間から『八戸は良い町ではない』と教えられ、それが正しいと思っているから」でしょう。
これって、どうにもおかしいです。だって、八戸のように不況に苦しみ、地場産業もイマイチ伸びないなんて町、全国に掃いて捨てるほどあるんです。八戸に限った問題ではないんですね。「八戸はダメだ」という言葉は、すなわち「日本はダメだ」と言っているのと同じなんですね。こんな事言ったって、何の役にも立たないのは自明というものでしょう。
・・・ポイントは、八戸にある良い点を理解する事だと思うんです。物知り顔で悪く言うのはカンタンなことですが、褒めることは難しい。経済規模やら人口やらという「数字」で比べるなら、東京が日本で一番良い町になるんでしょうけど、それでは救いが無いですよね。八戸は東京に成り代わることは出来ないし、そもそも八戸には東京には無い美点がたくさんあります。
小林さんの「地域密着型教育の実施校を全小・中学校に拡大」という施策によって、まずは八戸市民が八戸の良さを理解するところから、八戸の成長ははじまるのではないかと思うんですね。そもそも市民ですら良いと思っていない町が成長するわけがないし、ひいては観光なんてもってのほかです。「はっち」の成功も、「種差や蕪島に誘客施設・休憩施設を整備」という小林さんの施策も、成功するかしないかはまず「市民が八戸を好きか?」という一点に集約されると考えます。地域の良さを、まず子供たちに分かってもらう。それが叶わないのに、若者に八戸を担ってもらうことは不可能だと思うんです。
朝市・横町・歩行者天国・地域SNS「はちみーつ」など、八戸を前向きに楽しむ空気が少しずつ八戸に満ち始めている今こそ、「八戸は良い町だ」という基本認識をコンセプトに据えた施策で市民を盛り上げて欲しいと思います。
当面の課題は、やはり「はっち」。箱は出来た、じゃあその中で何をやる? という部分について、現状ではイマイチよく分かっていない市民が多数ではないかというのが僕の理解です(そして僕もそんな風に「はっち」の良さを計りかねている一人です)。でも、だからといって、応援するつもりが無い訳ではない・・・というか、むしろ応援する気マンマンだったりします。ここが気合いの入れどころ、面白い企画で市民を喜ばせて欲しいと、小林さんに期待のエールを送ります。また、今回の市長選で惜しくも当選に至らなかったお二人についても、今後の八戸への貢献を期待したいと思います。
八戸は、良い町かどうか。小林さんには、「良い町だ」という証明を期待して、今回の選挙の総括としたいと思います。長文になりました、お読みいただきありがとうございました!
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