
とある地方の山間の路線に揺られながら、ボンヤリと何を考えるでもなく考えていたんですが、ふと気付いたんです。ガラガラなのに、僕の隣だけ、オジサンが座っている。
車両の真ん中辺りの窓際の席で、僕以外に横並びで2人座っている人はいない。普通に考えたら、となりに相席することは無さそうな状況なのに、なぜか分からないけれどオジサンが座っている。
肘掛けの外(の僕の席)にはみ出すほど身体は大きく、さらに大きなカバンを網棚に置くことなく抱えている。インフルエンザが流行っている近頃に四六時中咳をしていて、しかも時刻表を見てずっとアンダーラインを引いたり、空中をペンで指しながら何かを計算していたりする。挙げ句の果てには、独り言も10分に1回ほど言う。そんなオジサンが座っている。
何故だろう? どうして僕の隣だけ人が座っているのだろう? とひとしきり考えてから、答えを確かめたら・・・ビンゴ。車掌さんに切符を見せる時に覗き込んだら、オジサンの車両は隣であることが切符に書いてありました。しかし車掌さんは車両が違うことを指摘せず、オジサンはそのまま席を変わることもなく楽しそうに空中で数字を足したり引いたりし続けている・・・どうやらそれは複数の路線を乗り継ぎながら旅をする際の所要時間を計算しているようで、空中で60分が1時間に繰り上がったりしている。繰り上がりの計算が難しいのか、そのたびにオジサンはバリバリと頭を掻き、シートを揺らせて座り直す。
うーむ。やれやれ、ついてないんだな、今日は。
そう思って窓に目を向けると、とある事に気付きました。窓に何か、絵が描かれている。それは尖ったもので窓ガラスを直接削って描いたようで、指でこすっても消えない透明な「ウンコ」の絵。3段の立派に巻いているウンコが、僕の席の窓ガラスの高さいっぱいに、のびのびと描かれていたのです。
なるほど、そういうことだったか。
僕は「その日の僕の星回りがどのようなものか」を悟り、立てた肘の内側に潜り込んで目を閉じたのでした。
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