
漁港として有名な八戸でも近年その良さが再認識されつつあるのがサバです。ブランド化や市内への専門店の出店・新商品の開発などが盛り上がっている中、メディアでも採り上げられているサバの棒寿司があります。八戸ニューシティホテルさんの谷口板長さんが作った「虎鯖棒すし」です。四の五の言わずに、結論を先に書きますね。
間違いなく一流。文句なしに旨い。
「虎鯖棒すし」、その驚くべき味
味を人に説明することほど難しいことはないと思うのですが、僕なりにどう旨いのかをまとめてみました。
- まず第一に、サバが刺身よりもやわらかいって、どういうことだ?
- 加えて、普通の〆鯖や棒寿司のサバはパサパサしていたり繊維ばっていたりするけれど、このサバは口の中でゼリーのようにほどけていく。なんだコレは?
- たっぷりと脂がのっているのに、青魚独特のクセが消えてしまっている。結果的に口の中はサバの旨味のスープになったかのよう。
- というか、そもそも酸っぱさが奥ゆかしく隠れている! サバの旨味のスープが口いっぱいに広がる裏に、こっそりと酸味があるという上品さ。
〆たサバって、普通のイメージだと「ギュッと〆られて、堅くなっている」っていう感じじゃないですか? それに、白っぽくなって筋肉の線維が見えているような、噛むとギュッと肉がズレていくような、そんな食感を思い浮かべませんか? そして、味は何より酸っぱい・・・それが一般的な〆鯖だと思うんです。
ところが、この「虎鯖棒すし」はその真逆、サバの肉がまるで生のようで、適度な〆具合のおかげなのか刺身を超えるやわらかさで、口の中でホロホロと溶け、旨味のスープになってしまいます。これはね・・・ちょっとしたカルチャーショックです。特に「棒寿司といえば、焼いたもの」と考えている関西の人がこの棒寿司を食べたら、過去に食べた棒寿司を振り返って気が抜けてしまうんじゃないかと思うぐらいです。刺身でもなく、〆鯖でもなく、それらを超えたやわらかさ・・・「棒寿司を口で切って食べようとしたら、サバが切れずに結局一口で食べてしまった」なんて事がよくありますが、「虎鯖棒すし」ではそんな情けない事には絶対になりません。そもそも歯でサバを切る感触すら憶えていないんですから。
それからもうひとつ付け加えるとするならば・・・この「虎鯖棒すし」は醤油をつけて食べるんですけど、その醤油がそもそもスゴイ。森田味噌・麹店特製の「極上たまり醤油」は、決して塩味を補完するものではなく、芳醇な香り付けとして機能している。そもそも醤油を付けなくても美味しいのに、付けると雰囲気がガラリと変わるんです。なんというのかな・・・
- 醤油を付けずに食べた時の印象を「白々としてさわやかな昼間の日の光」と例えるのなら、
- 醤油を付けて食べた時は「夕暮れ時のオレンジ色の叙情的な夕日の光」と例えられる。
・・・感じで、口の中の雰囲気がガラリと変わります。おいしくないものを食べる時には往々にして醤油を「強制的に味を調え、塩分を足して誤魔化すもの」として使ってしまうんですけれど、「虎鯖棒すし」と「極上たまり醤油」はまったく違います。旨味と香りを加える醤油と、新たな一面を見せる棒寿司。
そんな「極上たまり醤油」という最高の伴侶を得た「虎鯖棒すし」。その味は「八戸ではサバが獲れるから、イキオイで作ってみました」なんていうものではなく、折り紙付きの高級店の料理のような気品に満ちていました。逸品だ、と僕は思いました。ちょっとコレは・・・群を抜いてます。全国クラスの味であることは確定だと、言い切りたい。
谷口板長さんについて
そもそもが、谷口板長ご自身が舟に乗られる人とのこと。さぞかしサバの旨さを理解されているんだろう・・・そう思っていたのですが、ご本人のお話を聞くと・・・
- そもそも棒寿司というアプローチについて、○○さんにヒントをもらった。
- 旨いサバ料理を作りたいと思ったきっかけは、漁師の父を持つ友人の家で出された〆鯖だった。

・・・と、至って謙虚。一方で、サバや漁業や八戸についてのお話を聞くと、圧倒的なほどの情熱も持たれています。サバに対する情熱と、この謙虚さ。2つが混じり合った谷口板長の笑顔は、仕事で溜めた疲れをこっそり隠していた僕の心をやわらかくほぐしてくれました。右の写真は谷口板長の背中に輝く「虎鯖」の2文字。このTシャツ、いいなぁ(笑)
実はというと、元々この「虎鯖棒すし」を知ったのは、谷口さんから当サイトへ寄せられたコメントでした。当サイトのフォトジャーナルについてお褒めの言葉をいただいたことをキッカケに、先日の帰省で八戸ニューシティホテルさんにお邪魔しようと思い、カメラを携えていそいそと向かいました。頭の中で心配していた事はひとつ。「おいしくなかったら、どうしよう?」。こんな事を書くのは谷口板長に大変失礼だということは重々理解しているとはいえ、そもそもが谷口さんからのご好意をきっかけに結んだ縁ですから、もし「虎鯖棒すし」が期待を下回る出来だったとしても、悪くは書きにくい・・・そう思っていたのです。
この点については、先日お会いした際に直接謝らせていただきました。その失礼をお詫びすると同時に、それが杞憂であった事も伝えました。「本当においしくて、僕はウソなく記事を書ける。本当に良かった!」と旨いお酒のイキオイに任せるように・・・自分で言うのもアレですが、破顔して谷口さんに告白できたのでした。
八戸の人ならいつでも食べられます! 全国の人は・・・
そんな谷口板長に会えて、美味しい「虎鯖棒すし」がいただけるのは、八戸ニューシティホテルさんの7階。ホテル入り口から左手のエレベーターですぐ、宿泊者じゃなくても利用できます。ホテルという建物はフラッと入るにはちょっと敷居が高いかもしれませんが、何の問題もなく利用できますので、八戸にお住まいの方は是非一度味わってみていただきたいと心から思います。

一方で、八戸から遠くにお住まいの方は、通信販売で「虎鯖棒すし」を手に入れることができます。八戸ニューシティホテルさんのホームページの紹介ページからの申し込みも出来ますし、八戸の特産品を扱うショッピングセンター「八食センター」さんのネット通販ホームページの特設ページからもご購入いただけます。パッケージはこちらの写真の通り、実際のサバの虎の模様があしらわれていて、谷口板長が書かれたロゴがビシッ! と入った気合いの一品となってますよーっ!
ただ・・・お店にお邪魔した僕の実感として敢えてひとつ言わせてほしい事があります。この「虎鯖棒すし」、やはり通販ではなくお店で召し上がっていただきたい、と。どれだけ綿密に製造されているとは言え(製造という言葉が似合わないほど、実際にはひとつひとつ手作りされていますが)、やはり輸送の時間によって味が落ちてしまう可能性が否めないという点について、谷口板長も心配されていました。こんな事を正直に言う人っていうだけで好感が持てますが、やはり谷口板長が作り上げる味をそのまま体験するには、お店で食べるのがベストだと、僕は断言したいと思います。
通販で取り寄せて食べることを「CDを買って聞く」事に例えるのなら、お店で谷口板長さんの手から受け取って食べるのは「ライブを楽しむ」事に例えられるでしょう。八戸という舞台で谷口板長さんが作り上げる一皿、もしよろしければ、八戸を訪れてライブで楽しんでみませんか?
谷口さんの想い
八戸を盛り上げたいという想いから当サイトを立ち上げた僕としては、やはり「この美味しい料理を使った八戸振興策」について考えを巡らせてしまいます。当然のようにそんな質問をした僕に対して、谷口板長さんはこう言いました。
「子供に安心して美味しく食べてもらえるサバが造れれば、それでいい」。
この一言には、ハッとさせられました。どんな技巧が施された棒寿司であろうと、谷口板長さんのスタート地点は「無添加・無着色・無保存料」。これだけは絶対に外さないと、開発当初から心に決めていたそうです。そうでなければ、造る意味がない。八戸という町の素晴らしさも、サバの美味しさも、どんな想いを実現しようとしたとしても、何もかもはまず「子供が安心して美味しく食べられるか」にかかっている。そう、谷口板長さんは言いました。
八戸は漁港として栄えている以上に山海いずれもが豊かであり、美味しいものを安く食べられる土地。その土地の良さを守り、育て、アピールするためのスタート地点は「子供でも食べられるものか」の一点である。そのロジックは、ともすれば経済やら政治やらという小難しい話のループに陥ってしまう僕の頭には、鮮烈に、実直に響きました。
鮮烈で、実直。そんな谷口板長の想いが形になったような「虎鯖棒すし」。是非、ご賞味下さい。
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