
(昔の話です)
大学院の頃、同じクラスを取っている二人の男が言い争いになったことがあります。「学生の男の言い争い」と言えば、大抵は内容は無い下らないもの・・・でも、この時の内容は、どこか気になるものがありました。
「神は存在するか」について、議論していたんです。
しかも、議論している二人が、これまた異例。一人はインテリ風・・・といっても、父っちゃん坊やみたいな風体で「まだデビューしていない」感じ。もう一人はチャラチャラしてるんだけど、どこか憎めないタイプ。そんな二人が神がいるかどうかを議論してるんですね。
二人の間の話は、予想通りインテリ側が上手く進めていきましたが、最後がマズかった。
「君はそんな本も読んだ事無いのか。」
とインテリが言った瞬間、チャラチャラのほうが「な」と声というよりは音を発したかと思うと、席を立ってしまいました。その様子を見ていた周囲の何人かはチャラチャラに駆け寄り、何やら声をかけている一方で、インテリのほうは汗ばんだ顔のままジットリとした笑顔を浮かべて座っていました。
予想通り、インテリへの風当たりはキツくなりました。「神様」というあだ名が付きました。チャラチャラの側についた一人のマッチョな男が、神様の悪口をまくしたてます。
「神様がいるかどうかを証明できてる奴なんて誰もいねーんだよ世界中によ!」
ごもっとも。
「『君はそんな本も読んだ事無いのか』なんて言う奴、本当にいるんだな」
ごもっとも。
「訳分かんねー事ばっか言ってよ、この前も『ストイック』とか言ってさ。何だよそれ!」
ごもっ・・・あ、いや、それは普通に言うと思うんだけど。禁欲的とか、うつつを抜かさず物事に集中してる様子とか、そういう事を表す時に。
そんなこんなで、僕は「神様」とチャラチャラの間でどっち付かずの立ち位置になりました。どっちの言い分も、部分的には同意します。
- 「神様」側 : 「ストイック」っていう言葉は、使うと思う。
- チャラチャラ側 : 『君はそんな本も読んだ事無いのか』という言われようは、ヒドイ。
結局僕はいずれの側に属する奴らとも友達になりませんでしたが、チャラチャラの側と同じ部屋の研究室に属する事になったので、少し面識が出来ました。でもそこで終わり、卒業となりました。
5年後
彼女といっしょに東京駅のコンコースを歩いていると、本当に偶然にチャラチャラと会いました。
「おー久しぶり!」
「おお」
久しぶりに会ったチャラチャラは予想以上に僕に会えた事をうれしそうにしてくれて、なんか良い気分になったことを憶えています。でも、なんか、うまく話せなかったなぁ。あの「神様はいるかどうか」の不毛な議論が頭をかすめちゃって。「ストイックっていう言葉は、普通に言うと思うんだけど」っていう喉につかえた気持ちを思い出しちゃって。
結局、1分ぐらい話してそのまま別れてしまいました。
今日
そんな事を思い出したので、ブログを読んでいる「僕の大学院時代の事なんてまったく知らない皆様」には申し訳ないんですが、ここで謝りたいと思います。もう会う事は無いだろうけど、せめて。
チャラチャラ、ごめんね。
神様、ごめんね。
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