
視聴率低迷に喘ぐドラえもんを憂うホームページを見ると、芸能人を使うなどした安易な視聴率獲得の手法がさらなる低視聴率化を招いているという強い訴えが読み取れます。
僕はその前に、ドラえもんが「大山のぶ代」から「水田わさび」に変わった辺りでどうにもダメになってしまったクチなので、声優が変わって落ちた視聴率を芸人で埋め合わせようとしてるんだろ? と思いながらこのサイトを感慨深く眺めていました。国民的アニメ・ドラえもんの凋落。寂しいものです。
アニメ視聴率のまとめサイトを見てみると、2000年頃は平均して14%弱だった視聴率は、目下9%程。視聴率は当時に比べ全体的に落ち込んでいるので単純な比較はできないけれど、「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」「クレヨンしんちゃん」辺りが踏ん張っているのを見ると、ドラえもんのみ落ち込んでいるのは見て取れます。
芸人を使うのは愚の骨頂であることは確か
単刀直入に言って、ドラえもんが芸人を使って視聴率を稼ごうというのは愚の骨頂だと思います。何故スタンダードとしての価値を確立したドラえもんにミズモノの芸人を使うのか。アニメ自体の面白さを改良しようとするチャレンジならまだしも、芸人を使っても品位を下げてスタンダード感を失うだけだと思います。
例えば、ドラえもん同様にスタンダード感があるスーパーマリオとかポケモンとかのゲーム中にお笑い芸人が出てきたりしても、なんか安っぽいですよね。お寿司に今流行りの食材を入れた新しい味を作っても、よほどのものではない限り「安っぽいね」と言われてしまうでしょう。スタンダードを守るのは「過去の味を守りながら、新しいことをプラスして驚かせる」というギリギリのところを攻めなくてはいけないんですね。
この通り、上記サイトが論じている通り、芸人を安易に使ったテコ入れは全く意味を成さないと僕も思います。でも、今の視聴率低迷については、個人的にはやっぱり「声優の変更」にあると思います。特に、ドラえもんの声優変更が最も大きいのではないかと思うのです。
声が低いということ
ドラえもんの旧声優、大山のぶ代さんのドラえもんは、声が低かったですよね。一方、今の水田わさびは、声が高い。これって、
- 今のドラえもん : のび太と差が無い・同世代に近い
- 昔のドラえもん : のび太と差がある・のび太よりも上の世代・親の世代に近い
ということだと思うんです。言い換えれば、今のドラえもんを見ても、親の世代の人は「自分の居場所が無い」のではないかと思うんです。
エンターテイメントの基本として、自分の世代・自分の性別といった「人を形作る基本的な属性」が近いものが参加している方が楽しめるという原則のは、ひどく安っぽいけど、強く強く人を支配しているものです。
若い世代が書き、若い世代が読むから流行る「ケータイ小説」に対して「文章も下手だし内容も凡庸、読む価値無しだよ」と言うのは、半分当たってるけど半分はずしてるんですね。文章が下手だろうが、同世代が書いていることに価値があるから、同世代の人たちは楽しく読めるんです。
テーマに戻ると、ドラえもんの声が低いということは、やもすれば子供だけになってしまうアニメの中に「大人」を登場させ、「のび太を親の世代から見る」とい視点を視聴者に提供するための重要なファクターだったのではないかと思うわけです。
それが、今の世代のドラえもんでは、みんな子供の声になってしまいました。子供たちがふざけてるだけのアニメを見ても、子供しか喜ばないですよね。
- サザエさん:全世代がくまなく登場している
- ちびまる子ちゃん:まる子の声が低く、シニカルに世界を揶揄する
- クレヨンしんちゃん:ちびまる子ちゃん同様、しんのすけの声が低く、世界を揶揄する
こうまとめると、サザエさんは王道を行っていて、ロシア文学のような重厚な世界観をベースにしているように見えますし、ちびまる子ちゃんとクレヨンしんちゃんは夏目漱石の「我が輩は猫である」のようなウィットが効いて軽妙な世界観をベースにしているように見えます。
いずれにせよ、物語の中に「子供」と「大人」が同時に存在していて、両側の視点から物語を眺められる多重性を持っていることが、「全年齢対象」という視聴率を稼ぐ要素に繋がっている点がポイントでしょう。
「全年齢」が最も狭いマーケティングだ
ドラえもんは、声優の変更によって「大人」を劇中から失い、全年齢を失い、それを補填すべくミズモノの芸人などを使って寿命を自ら縮めるというヒドイ状況に陥っている・・・と僕は思います。ただし、同情もするんです。企画担当としてメシを食っている僕としては、「全年齢」が一番難しいことを想像するのは容易です。
「全年齢」が、一番狭いんです。
子供向け・大人向け・男性向け・女性向けなんて具合に、対象を狭く定めて商品を企画するのは簡単なんです。何が響くかも想像しやすいですし、広告のパスだって有効な何本かを抑えれば良いんですね。
でも、「全年齢」はそうは行きません。ここまで議論してきた「全年齢」と、もうひとつ「全世界」が、最高に難しいんです。これをやろうとすると、正直何年あっても足りないぐらい考えるべきことは山積みになります。逆に考えている人も多いのですが、企画をする時もっとも狭いピンポイントを突かなきゃいけないのは「全年齢」「全世界」なのです。
「全年齢」と「全世界」、これって、既にドラえもんが獲得しているものですよね。これを守るのは並大抵の事ではないですが、頭を振り絞って考えて欲しいとテレビ朝日に願います。同じ企画屋としてこれまでの施策は一切同意できませんが、ドラえもんという巨大なブランドですから、今から復活する底力も秘めているはずです。
ドラえもんで育った事を自負する僕として、せめてものエールを送ります。
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